介護のドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』

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『ぼけますから、よろしくお願いします。』

『ぼけますから、よろしくお願いします。』

という映画を拝見する機会がありました。

映画「ぼけますから、よろしくお願いします」公式サイト
http://www.bokemasu.com/

本作品は、

娘である「私」の視点から、認知症の患者を抱えた家族の内側を丹念に描いたドキュメンタリー。

と紹介されているとおり、

映像作家の信友 直子さんが、

すべて、ご自身で

年老いたご両親の姿を

撮影したという映像からなっています。


陽気でしっかり者の母親が

徐々に「出来なくなって」いく姿、

家事は妻任せで

やってこなかった

という
90歳を超えた父親が

「やらなければならなくなる」

という姿が

描かれていますが、

大変なこともあるけれども、

ユーモラスなシーンがあったり、

何よりも、

家族間の結びつきが強く

お互いが、お互いを思いやる

その温かい姿も見られ、

介護というと、

なにかと暗いイメージがある中でも、

本作は

活力をもらうことができる、

希望を感じることができる、

という作品になっていると感じました。

「演じた」ものではない映像

本作品は、

映画にするつもりなどなく、

長友さんが、撮影の練習のために、

両親を撮影していたところ、

しだいに、母親の様子を見て、

「あれ ?」

と感じることが増えてきて、

それを編集して、

「 Mr. サンデー」(フジテレビ系列) で

2016年 9月 に特集として放送したところ、

大きな反響を呼んだため、

追加取材を行い、

映画として再編集したそうです。


そういう背景と、

実の娘さんということもあって

本作品は、

長友さんご一家の

一切の演技のない、

ありのままの日常の様子が

映像化されています。


認知症と診断された時の姿や

不調で床に伏せる姿

そして、

わからんようになった、どうすればいいんかね

と不安になり、

混乱し、

取り乱す姿まで、

そういったものも全て、

映し出されます。

その強烈なリアリティに触れると、

嫌でも、

自分が、妻が

老いた時に、

どういう事になりえるのか

ということを

考えずにはいられませんでした。


「いい顔をしたい」のが、

人間の心理だと思いますが、

この映画は、

「ありのままを撮りなさい」という

信友さんのご両親のご理解、

いや、信念といったほうがいいかもしれませんが、

そういうものがあって

初めて映像化されたものだということが、

よくわかります。

本当に貴重な作品だと感じます。

私は、

映画上映後に行われた

講演会で、

信友さんご本人の

お話を伺うことができたのですが、

信友さんも、

両親のご理解、

体を張る姿勢について、

これは本当にありがたいことだ、

ということを

おっしゃっていました。

命をかけた、最後の育児

また、信友さんは

親が年老いていくこと、

認知症もその一つですが、

さまざまな病気になったり、

それを受け入れていく姿をみるなどして、

取材を通じて、

初めて気がついたこと

初めて理解できた

ご両親の気持ち

といったものが

たくさんあった

といいます。


例えば、

横になる母が、

父に「起こしてほしい」と

ねだるシーンが

劇中にもありますが、

実際にしょっちゅう

そのような姿が見られるそうです。

そのように、

娘さんの目を気にせずに、

父に甘える姿を見て、

本当は今までも、

こうやって甘えたかったんだと、

お母さんの気持がわかった

といいます。

また、父親も

今まで家事をしなかったけれども、

できなくなった母親の代わりに

炊事、洗濯、縫い物まで

何でもこなすようになり

驚いていたが、

実はこれは、

やらなかったのではなくて、

やらせてもらえなかった

というだけで

母親の様子をしっかり見ていたのだ

ということに気づいた

といいます。


そして、

信友さんは、

ご両親が、

「老いる」ということを通じ、

身をもって

命をかけて、

最後の育児をしているのだ

と考えるに至ったそうです。

年老いて、できることが少なくなっても、感謝を忘れない

本作品の中で、

混乱して取り乱す

お母さんに対して、

お父さんが激しく怒る

という

とても印象的なシーンがあります。


信友さんが言うことには、

普段全く怒ることがない
温厚な父が、

ごくまれに怒った、その姿を

作品として残してよいか、

相当悩んだといいます。

しかし、採用することに決めた

その理由は、

父が、
感情的に怒っているわけではなく、

感謝の心をなくしている

ことに対して、

怒っている事に気づいたから

だといいます。

認知症になって、

物忘れが多くなり、

できないことが増えることは

仕方がないことだけれども、

たとえどんな事があっても

他人から受けた恩に

感謝することまでは

忘れてはならない

人として、

感謝の心をなくしてしまってはいけない

ということを伝えていたから

だといいます。


このエピソードについては、

書籍に詳しいお話があるようで、

映画と合わせて読むと、

理解が深まりそうですね。

抱え込まずに、オープンに

信友さんのお父さんは

作品が公開された後に、

ちょっとした街の人気者になった

といいます。

買い物でサービスしてもらったり、

ときには献立を考えてもらったり、

など、

街の人から声をかけてもうことが

とても増えたそうです。

そのなかで、

先のシーンについて

「お父さんかっこよかったよ」と

言われることもあるようです。

そして、

お父さんご自身も

声をかけてもらうことを

喜んでいる様子だと、

語ってくださいました。


そういったことを経験し、

信友さんは私たちに、

今はもう、

認知症だからと後ろ指を指される時代ではくなった と、

後ろ指を指される

時代じゃないのだから、

一人で、夫婦で

抱え込まないで

オープンにしたほうが良い

そして、

周りの協力を仰いでいくほうが 良い

そう、

と語りかけてくださいました。


人生 100 年時代とはいいますが、

どんなに健康に気を使っていても、

どんなに体力づくりなどを頑張っても、

確実にやってくる老いを、

ないことにすることはできません。

そして、

本作品のような状況は

これから多くの方が

直面する問題に違いありません。

誰もが、

いつかは弱くなります、

確実に。

そんなときに、

どうするべきかについて、

考えるきっかけを、

本作品は与えてくれました。

そして、

悲しみや

葛藤を抱えたまま、

一人で、夫婦で抱えこむより

外に出ることで、

知ってくれた人が

気にかけてくれる

それだけでも大きな違いがあります。

外に出ることは、

加齢とともに

しだいに難しくなるかもしれませんが、

それでも、

人との関わりを

なくしてなならないと、

自分たちだけでがんばることには

限界がありますからね。

そして、

感謝の心を
持ち続けること、

笑顔を絶やさないこと

私も、実践できればと

そう考えました。

関連情報

映画「ぼけますから、よろしくお願いします」公式サイト
http://www.bokemasu.com/

公式サイトによると、映画館での上映はすべて終了しているようですが、 Amazon Prime Video で作品を見ることができるようです。